倉富(くらとみ) 彰秀(あきひで) (68)

 1956年、佐賀県生まれ。子どもの頃、米国の医療ドラマ『ベン・ケーシー』を見て、困っている人を助ける青年医師に憧れた。倉富さんは長崎大学医学部に進学し救急病院での研修を経て眼科専門医となり、1994年に佐賀県神埼市で「くらとみ眼科医院」を開業。その翌年に個人でPOSAを設立し、インドにおいてアイキャンプという形で白内障の無償手術を行う、眼科医療援助活動を開始した。POSAはProject Operation Sight for Allの略で、“すべての人に光を”という願いが込められている。現地の眼科医と共同で取り組んだが個人の力には限界があると認識し、1999年にNPO法人化。2000年からは眼科医が100名ほどしかおらず、富裕層以外は手術が受けられないバングラデシュで活動している。日本で主に70歳以上に見られる白内障は、バングラデシュでは栄養不足の影響で働き盛りの40歳代でも発症する。失明し、職を失うことが死に直結する。倉富さんは現地小学校でビタミンAの投与や寄付をし、角膜混濁が原因の失明予防活動も展開している。アイキャンプでは1週間に約100人の白内障手術を行う。携わる日本人医師、看護師、視能訓練師は自費参加。現地医師の費用はPOSAが負担する。自主的に参加する医学生や高校生らもおり、倉富さんの活動は人材育成にもつながっている。