新海 (しんかい) (まこと) (50)

 1973年、長野県生まれ。アニメーション監督。2002年に短編作品の『ほしのこえ』で商業デビュー。新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」などを受賞し、分業制作が一般的なアニメーション作品をほぼ一人で作ったことでも話題となり、新海さんが新進気鋭のクリエイターとして注目されるきっかけとなった。2004年にはスタッフを集めて制作した初の長編作品『雲のむこう、約束の場所』を発表。この時に集まったスタッフは今でも新海さんのクリエイティブチームの柱を担っており、その後、仲間たちと共に2007年に『秒速5センチメートル』、2011年に『星を追う子ども』、2013年に『言の葉の庭』を発表してゆく。これらの作品はアジアやヨーロッパなどで開催された国際的な映画祭でも高い評価を受けている。2016年に発表された『君の名は。』は、当時の邦画の歴代興行収入2位という大ヒットを記録。第40回日本アカデミー賞では、アニメ作品としては初となる「優秀監督賞」、「最優秀脚本賞」を受賞し、その他国内や海外の映画際で多くの賞に輝くなど社会現象を巻き起こし、新海さんの地位を不動のものとした。その後公開された『天気の子』(2019年)や『すずめの戸締まり』(2022年)も数多くの観客を魅了し、新海さんは名実ともに日本を代表するアニメーション監督となり、2023年3月に「令和4年度 芸術選奨文部科学大臣賞(メディア芸術部門)」を受賞している。
 新海さんは長野県小海町(こうみまち)で生まれ育った。山々に囲まれた高原地帯で、見上げれば広大な空が広がっている。刻々と変化する空模様を飽きることなく毎日見ているような少年だった。その後、大学進学を機に上京。卒業後はゲーム会社に就職しゲーム制作に従事する傍ら、自分の作品を作りたいという想いが沸き上がっていき、次第に自宅のパソコンで映像作品を作るようになった。2001年に退職、映像クリエイターとして独立し、翌年に商業デビューを果たした。
 一般論として、芸術作品がすべての人に受け入られることは少ない。人種や宗教などによって、あるいは同じ日本人でも生まれ育った環境や現在の状況によって、作品の受け取り方はまちまちだ。エンターテイメントの枠の中で災害のような深刻な内容を扱うのは難しい。それでも新海さんは、光を巧みに利用した風景描写や音楽、登場人物の心理描写で伝えたいことを表現してゆく。作品に込めたメッセージが観客に伝わる時もあれば、思ったように届かないこともある。作品公開後にはさまざまな感想が寄せられる。高評価は素直に嬉しいと感じ、批判は作品の振り返りに生かし、次の創作過程で昇華させる。
 日本のアニメーションは世界に誇れるコンテンツである。第一線で活躍し続けている新海さんは子どもたちの憧れの存在で、目標でもある。今後の活躍も期待されている。
*副賞辞退のお申し出をいただいています