1975年、宮城県生まれ。1997年3月に山形大学農学部を卒業し、同大学大学院へ進学。1999年3月に農学研究科修士課程を修了し、2002年3月に岩手大学大学院連合農学研究科博士課程を修了し、博士号を取得した。その後、山形大学農学部では附属農場実習補助員・非常勤講師・助手・助教、岩手大学大学院連合農学研究科では助手・助教を務めた。海外での活動としてはフィリピンにある国際稲研究所で、2005年から2007年の間に合計9カ月間研究を行っている。国際稲研究所は国際農業研究協議グループ傘下の農業研究機関で、1960年にフィリピン政府とフォード財団・ロックフェラー財団の協力によって設立された、アジアでは最も古い国際農業研究所。アジアとアフリカの14カ国に出先機関を置き、イネに関する研究と教育を行っているこの研究所へ、佐々木さんは農林水産省の研究員として派遣されるなどして研究を行った。2015年6月から現職の山形大学農学部附属やまがたフィールド科学センターおよび栽培土壌研究室で准教授を務めながら、岩手大学大学院連合農学研究科の准教授も兼任している。
専門分野は土壌肥料学。当財団の支援金で、農林水産業や食品加工の現場で発生する有機性廃棄物を肥料化し、その肥料を水稲栽培に利用する仕組みを構築することを目的に、「地域内有機資源を活用した費用対効果の高い水稲用肥料とその施肥設計システムの開発」をテーマに研究する。製造された肥料を水稲栽培に利用するためには、適切な施肥設計を検討し、肥料製造と水稲栽培を連携する仕組みを構築する必要がある。肥料化における目標は、材料となる有機物を廃棄物として処理する場合よりもコストを低減して肥料化ができ、かつ水稲栽培に利用可能な肥料を製造すること。施肥設計における目標は、化学肥料を使用した場合と比較して施肥コストが低減でき、かつ目に見える施肥効果があること。肥料製造と水稲栽培の連携においては、肥料の輸送にかかる費用、燃料、環境負荷をできる限り抑えるために、一定地域内で肥料の製造とその利用(施肥)を行なうことが重要と考えている。佐々木さんは本研究によって山形県内または肥料を製造する場所から一定地域内において水稲用肥料に利用するための仕組みを構築したいと考えている。
日本の水稲栽培は、兼業や大規模経営に適した機械化や効率化が求められているため、養分供給源として化学肥料を利用するのが一般的である。有機物の施用は土づくり効果を期待して行われることが多く、養分供給の効果を期待した有機物施用は有機栽培などに限られている。しかし、化学肥料の価格高騰と供給量不足への懸念、持続可能な社会への取り組みに対する認識の向上などが後押しとなり、今後は廃棄処理される有機物を化学肥料の代替として利用する取り組みを本格化する必要があると考えている。佐々木さんは、自身の研究が目指す地域内での有機資源を循環する仕組みは、有機性廃棄物が発生する現場と水稲栽培の現場の両者が有機性廃棄物の肥料化を通してコスト低減と環境負荷低減を実現するものと考えている。