吉田(よしだ) (みやこ) (53)

 1965年、東京都国立市生まれ。9歳でバレエを習い始め、1981年に全国舞踊コンクール・ジュニア部門で一位となる。当時レッスンを受けていた先生の勧めで、松山バレエ学校に移籍し、1983年にローザンヌ国際バレエコンクールに出場。毎年スイス・ローザンヌで行われるこのコンクールは、15歳から18歳までのバレエダンサーが対象で、入賞者には世界的知名度のあるバレエ学校での1年間の留学や研修を無償で受けられる権利と生活援助金が授与される。吉田さんは高校2年生の時に挑戦し、ローザンヌ賞(スカラシップ賞)を受賞。英国ロイヤルバレエ学校に留学する権利を獲得した。芸術監督のピーターライト卿に認められ、1984年にサドラーズウェルズロイヤルバレエ団(現 バーミンガムロイヤルバレエ団)に入団。確かな技術で他を圧倒し、入団から4年後の1988年には最高位のプリンシパルに昇格した。1991年に英国のダンス専門誌『Dance & Dancers』の読者投票でダンサー・オブ・ザ・イヤーに選出され、一流ダンサーの仲間入りを果たす。1995年、姉妹カンパニーである英国ロイヤルバレエ団へプリンシパルとして移籍。1999年には新装されたロイヤルオペラハウスのこけら落としガラ公演で三作品に主演。名実ともにバレエ団の顔となり、日本公演でも多くの作品に出演した。2010年に同バレエ団を退団し、英国での26年のキャリアに終止符を打つ。退団後は活動拠点を日本へ移し、フリーランスとして活躍。世界各地の著名カンパニーにゲストプリンシパルとして招かれ、世界中のバレエファンを魅了した。
 バレリーナとして数多くの芸術賞を受賞しているが、それらの功績が認められ2007年には紫綬褒章と大英帝国勲章(OBE)を授与され、2017年には文化功労者に選出されている。吉田さんは、チャリティー活動にも力を注いできた。2004年にはこれまでの活動が認められて、日本人として二人目のユネスコ平和芸術家に任命された。踊り手として踊りで社会に貢献するという信念のもと、芸術文化を通じて世界の平和の大切さを、特に若い世代の人たちに伝えていくため活動に尽力している。
 今年1月、8月の公演を最後に引退することを発表。引退公演は自身の手によるプロデュースで、これまで吉田さんが踊ってきた数々の作品を国内各バレエ団のプリンシパルや英国ロイヤルバレエ団から応援に駆けつけたダンサーたちが踊るという構成で、吉田さんのバレエのキャリアを振り返るような公演であった。2019年8月8日、大喝采を浴び、多くのファンに惜しまれつつ現役を引退した。
 吉田さんは2020年9月に新国立劇場の舞踊芸術監督に就任予定で、昨年から同劇場舞踊芸術参与を務めている。引退を決意したのは監督業に専念するためでもあったという。ローザンヌ国際バレエコンクールでは、これまでに4回審査員を務め、若手ダンサーの発掘にも貢献。吉田さんに憧れ同コンクールに出場・入賞した多くの日本人の中には、世界的に活躍するダンサーが生まれている。子どものころから踊ることが好きで、踊ることに幸せを感じていた吉田さんは、バレエの魅力をより多くの人に伝える活動や、若いダンサーたちの応援をしたいと考えている。