石塚(いしづか) 真由美 (まゆみ ) (45)

 1969年、茨城県生まれ。子どもの頃、動物園の飼育係か獣医になりたいと思っていた。高校生のときに野生動物にも興味を持つようになり、北海道大学獣医学部へ。大学では毒性学を専攻し、化学物質が動物に及ぼす影響について学んだ。1998年3月、北大大学院獣医学研究科博士課程を修了。獣医学博士号を取得。日本学術振興会特別研究員や国立環境研究所研究員を経て、2000年10月に北大大学院獣医学研究科・環境獣医学講座の助手に就任。その後、米国のカリフォルニア大学デイビス校で研究活動を経験し、2004年4月に北大大学院の環境獣医学講座へ復職。以降、環境毒性学を専門にした研究を継続しており、2010年、毒性学講座創立20周年を迎えた節目の年から教授を務めている。
 石塚さんは、ヒトと動物の共存のための獣医学という視点で、毒性学と生態学をフィールドで融合させた研究を行ってきた。強い関心を寄せているのは、ケミカルハザード(=化学物質の有毒性による被害)問題が顕在化しているアフリカ諸国の現状だ。鉛、亜鉛、銅、コバルトなどの豊富な鉱山資源により急激な経済発展を遂げている一方で、乱開発によって引き起こされる環境汚染は深刻で、特に子どもの鉛中毒など、人的被害にどのように対処するかがアフリカ諸国共通の課題となっている。石塚さんが取り組んできた環境汚染が生体や生態にもたらす影響の研究では、WHOの勧告を上回る食肉の有害金属蓄積が明らかとなりつつあり、これまでに国立公園内の野生動物もヒトと同じく日常的に環境化学物質にさらされて高濃度の金属や農薬の影響下にあること、同じ化学物資への暴露でも環境化学物質に対する代謝能の違いにより感受性には種差があることなどを報告した。今後は当財団の支援金で、ザンビアや南アフリカに生息する野生動物の生態系をモデルとしてハイリスク種を同定することや、重度金属汚染地域において毒性学的調査を実施し、ヒトへの影響を解明するとともに汚染源を同定し、汚染物質を除去した場合の効果を明らかにしたいと考えている。これらの研究で化学物質汚染の調査監視と分子疫学的調査が実行されることにより、ヒトへのリスクの予測が可能となるだけでなく、生態系の保全にもつながると期待される。
 着任からの数年間、北大大学院獣医学研究科の女性教員は一人だった。石塚さんは研究以外にも、ハラスメント相談員や女性研究者支援室でも活躍。他大学へ講師として招かれ、環境問題に関わる若手研究者のキャリアパスについて自身の経験を語るなど、後進の指導にも積極的に携わってきた。アフリカ諸国では女性研究者の数は少なく、地位も確立されていない。石塚さんの研究課題は女性に関心が高い分野でもあり、共同研究への参加を希望する女性研究者は多い。さまざまな働きかけや支援が必要と感じている。