外尾(そとお) 悦郎(えつろう)(61)

 1953年、福岡県生まれ。京都市立芸術大学で彫刻を専攻。1978年、石を彫るために渡ったヨーロッパ、スペインで人生は大きく変わる。天才建築家アントニオ・ガウディのサグラダ・ファミリアを見物しようと立ち寄ったバルセロナ。山積みの原石を見て、この石を彫ってみたいと強く願う。何度断られても工房へ通い、ついに試験を受けることを許され、毎回契約で仕事をする請負彫刻家の職を得る。最初は言葉も通じない若者に対して友好的ではなかったが、仕事に没頭する姿勢に周りの目も変わっていった。外尾さんの名を有名にしたのは2000年に完成した「生誕の門」の彫刻。15体の天使像が配置されている外尾さんのデザインが採用されており、2005年にユネスコの世界文化遺産に登録された。1882年に着工したサグラダ・ファミリアは今も建築中。内戦で設計図や模型の大半が焼失し、建築は手探りで進められている。外尾さんはガウディが残した「人間は創造しない。自然の中から発見するだけだ」という言葉を大きな指針とし、“ガウディが見ていた方向”を自身が見ることで彼を理解しようとしている。信頼を得て現在は、ただ一人自身の工房を持つことが許されている主任彫刻家となった。日本を離れて36年、彫刻プロューサーとして活躍を続けている。