服部(はっとり) 匡志(ただし)(50)

 1964年、大阪府生まれ。服部さんは2002年からベトナムで、無償の医療活動を続けている。医師になるきっかけは、高校生の時の父の突然の病死。文系志望だった服部さんは、4浪の末に京都府立医科大学へ入学。また医局説明会で心の師となる教授と出会ったことで専門を消化器外科から眼科へ変更した。大学卒業後は国内の複数の病院で経験を積み、網膜硝子体手術の分野で我が国トップレベルの技術を習得した。服部さんの転機は、2001年に母校で開催された臨床眼科学会で一人のベトナム人医師と出会ったこと。眼科治療が遅れているベトナムでは失明する人が多いと聞かされ、ハノイの国立眼科病院で患者の治療と若手医師の育成を開始した。当初の3カ月の滞在予定は12年になり、これまでに2万人以上の患者を治療し、時には治療費や手術代も肩代わりしてきた。現在、勤務医でも開業医でもないフリーランスの眼科医として、月の半分は活動に理解を示してくれた日本の10病院で仕事をして、自身と家族の生活費やベトナムでの医療活動費を稼ぎ出している。活動が定着し、ハノイやホーチミンなど都市部での医療活動は若手医師に任せられるようになっているが、地方の状況は厳しい。2週間ごとの日本との往復は、まだ続きそうである。